トップページ>研究内容>千葉泉(2014)『未来に向かって歩むみなさんへ 「自分らしさ」をこころの中心に』、多文化共生を考える会
未来に向かって歩むみなさんへ 「自分らしさ」をこころの中心に
本書は、中南米音楽演奏家・作曲家であり、大学教員・研究者である著者の半生を、「自分らしさ」と「自己展開」をキーワードに綴ったものである。「自分らしさ」を失い大学院で研究の方向性を見失った著者は、「新しい歌」との出会いや南米留学を通して「音楽活動」という「自分らしさ」を回路にすることを発見し、時に迷い、悩みながらも調査活動と教育活動を展開してきた。その半生を通して著者は、タイトルの通り「未来に向かって歩む」全ての人へ、「『自分らしさ』を見極めながら、これを積極的に活用しつつ歩み続けること、これが大事だ」とエールを送る。そして、「『自分らしさ』をめぐる思考錯誤のプロセスという、直接的には個人的な事柄が、実は、(戦後の日本が歩んできた「成長」や「発展」のモデルは本当に正しかったのだろうか?という)これらの社会的かつグローバルな問題について考える上でもヒントを投げかけてくれる」と結ぶ。本書の、13曲の挿入歌が、これらのメッセージをストレートに届けてくれる。
誰でも、悩んだり、不安を抱えたり、自信を喪っている時がある。そのような読者にとり、著者の語りと歌声は、肩の荷が下りるような解放感と、「よし、頑張ろう」という前向きな思いをもたらしてくれるだろう。
目次
はじめに
第一章:「自分らしさ」って何?
「自分らしいこと」と「自分らしくないこと」
「自分らしさ」と「開発」
第二章:「鉄腕アトム」から始まったぼくの音楽体験
江戸時代から続く学者の家系に生まれて
勉強嫌いの小学生、「鉄腕アトム」を弾く
第三章:「自分らしさ」の喪失
「学者病」の発症
分裂したぼくのこころ
「新しい歌」との出会い
大学院から放逐されて行った決断
ロック・バンドとの決別とC先生からの促進的励まし
第四章:南米留学で気づいた「自分らしさ」
伝統民謡「カント」に魅かれて
「弾いて歌って」調査する
「自分らしさ」を活かして「研究」する
庶民の街「ポブラシオン」に住む
はじめてのポブラシオン訪問
カトリック教会の音楽会「ペーニャ」
ポブラシオン住民となって学んだこと
第五章:「自分らしさ」の再喪失と回復
就職して再発した「学者病」
失意の中で再開したマプーチェ語の勉強
独学で続けたマプーチェ語の威力
現地語を使わない研究者たち
現地語でのあいさつで開かれたこころ
二言語ラジオ放送に出演する
失敗から学ぶ
第六章:「自分らしさ」で役に立つ-国際協力の場で-
「住民参加型開発」に関する研究に参加する
邪視治療師Jさん
魔術的世界が人間関係に及ぼす影響
活動前に抱いていた不安
何はともあれ、ギターを買う
三レベルでのコミュニケーション不足
専門家の理論と現地の実態
「自分らしさ」活用のより大きな意義
第七章:「自分らしさ」を活用する授業への挑戦-教育の場で-
「参加型授業」をめぐる葛藤
授業で歌い始める
中国語専攻学生の乱入(?)事件
学生とともに作る授業
第八章:歌って踊って共に楽しむ-多文化共生の分野で-
再び「自分らしさ」を忘れて
歌を通じて共に楽しむ
ゼミの学生たちとバンドを結成する!
ロス・キンセ、多文化共生の催しで演奏する
第九章:自作曲による「自分らしさ」の発信
自己解放のプロセスと音楽活動の展開
アルベルト城間さんに励まされる
ついに作曲を再開!
東日本大震災
それでも桜は咲く
ニューヨークで録音したスペイン語版の「それでも桜は咲く」
現地でのミニ・コンサート
おわりに
収録曲
歌うものは邪気を祓う Quien canta su mal espanta
ありがとう、いのち
嵐にざわめく幾万の花
イエス生誕の詩(第一の十行詩) Verso por nacimiento(1ra décima)
ビクトル・ハラに捧げるワルツ Vals para Víctor Jara
オレ・オラ! ¡Ole, hola!
歌って踊って Cantando y bailando
自然な自分で
輝く明日のために
それでも桜は咲く
Aun así el cerezo florecerá
ゆとろぎの灯
平和の鐘
Copyright © 2014多文化共生社会論講座 All Rights Reserved.